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最終更新日:2023年09月24日

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RCSA(Receptance Coupling Substructure Analysis)による振動解析

RCSA(Receptance Coupling)を用いたRCSA(Receptance Coupling Substructure Analysis)という計算手法があります.
これは複数の要素で構成される物体の周波数応答を,各要素の周波数応答の測定結果や予測結果から計算する手法です.
インパルス試験で測定した工作機械の主軸の周波数応答と,モデルから計算によって取得したツールホルダと切削工具の周波数応答を接続して,主軸系の周波数応答を計算したりできるそうです.
まず,実測値と計算値を組み合わせることができる点が優位点です.
また,「主軸+ツールホルダ+切削工具」の系でインパルス試験をして周波数応答を求める従来の方式では,あらゆる組み合わせで実際に試験を行う必要があります.
しかしながら,この手法を使えば,「主軸」+「ツールホルダ+切削工具」の系などに分けることができるので,予測に必要な情報を少なくすることができます.
1960年からある手法らしいのですが,振動関係の本で見かけたことはないです.
論文を検索してみても日本語ではほとんど出てこないです.
英語の文献なら出てくるので,興味のある人は英語で検索してください.
ここでは,その計算方法について記述します.

まずモデルとしては,主軸と,その先に取り付けられるツールホルダ+工具の2つの要素が接続されるものを想定します.
ですので,段付き片持ち梁のような簡易モデルになります.
そして,工具先端での周波数応答を,個々の周波数応答から求めるとします.

RCSA
図 想定するモデル(段付き片持ち梁)

ます,周波数応答関数を定義します.

\( h_{ij} = \frac{ x_{i} }{ f_{j} } \)

\( h_{ij} \):位置jの入力荷重に対する位置iの出力変位の周波数応答
\( x_{i} \):位置iの出力変位
\( f_{j} \):位置jの入力荷重

ここで,\( h_{11} \),\( h_{12a} \),\( h_{2a1} \),\( h_{2a2a} \),\( h_{2b2b} \)の5つを定義します.
各点での変位は次式で示すことができます.
\( x_{1} = h_{11}f_{1} + h_{2a1}f_{2a} \)
\( x_{2a} = h_{2a2a}f_{2a} + h_{12a}f_{1} \)
\( x_{2b} = h_{2b2b}f_{2b} \)

モデルの設定によって,以下の4条件が成り立ちます.
\( x_{2a} = x_{2b} \)
\( f_{2a} - f_{2b} = 0 \)
\( f_{1} = F_{1} \)
\( x_{1} = X_{1} \)

\( X_{1} \):出力となる変位
\( F_{1} \):入力となる荷重

ここでは,工具先端点での周波数応答を求めたいので,求めるべきは次式となります.
\( H_{11} = \frac{ X_{1} }{ F_{1} } \)

まずは変位の釣り合い式から展開します.

\( x_{2b} - x_{2a} = 0 \)
\( h_{2b2b}f_{2b} - h_{2a2a}f_{2a} - h_{12a}f_{1} = 0 \)
\( h_{2b2b}f_{2b} + h_{2a2a}f_{2b} - h_{12a}F_{1} = 0 \)
\( (h_{2b2b} + h_{2a2a} ) f_{2b} = h_{12a}F_{1} \)
\( f_{2b} = (h_{2b2b} + h_{2a2a} )^{-1} h_{12a}F_{1} \)

次に,ここまで得られたものを\( H_{11} \)に代入していきます.

\( H_{11} = \frac{ X_{1} }{ F_{1} } \)
\( H_{11} = \frac{ x_{1} }{ F_{1} } \)
\( H_{11} = \frac{ h_{11}f_{1} + h_{2a1}f_{2a} }{ F_{1} } \)
\( H_{11} = \frac{ h_{11}f_{1} - h_{2a1}f_{2b} }{ F_{1} } \)
\( H_{11} = \frac{ h_{11}F_{1} - h_{2a1}(h_{2b2b} + h_{2a2a} )^{-1}h_{12a}F_{1} }{ F_{1} } \)
\( H_{11} = h_{11} - h_{2a1}(h_{2b2b} + h_{2a2a} )^{-1}h_{12a} \)

上式を用いることで,5つの周波数応答から工具先端点での周波数応答を計算できることになります.

参考文献:


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