切削加工の専門書と論文のリストとオススメ
最終更新日:2024年01月08日

戻る

生産技術の観点から考えるレビットのドリルの穴理論

"People don't want to buy a quarter-inch drill. They want a quarter-inch hole!"という言葉があります.
レビットのドリルの穴理論と呼ばれることもある言葉であり,マーケティングの大家であるTheodore Levitt(セオドア・レビット)博士が著書「マーケティング発想法」に記したものだそうです.
マーケティングの話であり,この言葉が言いたいのは「ユーザが欲しいのはドリルではなく,ドリルの穴であって,それが顧客の本当の要求であるから,そこへのアプローチが重要である」みたいな意味らしいです.
そのため,これは生産技術と直接は関係ありません.
しかしながら,生産技術の観点から考えても結構面白い考え方だと思うので,それについて書きます.

生産技術者が,カタログでドリルを選定しているときに本当に欲しいものは,ドリルそのものではなく,工作物に必要な穴です.
その穴が直径,真円度,真直度,円筒度などの規格を満たすことが重要であり,必ずしもドリルで穴をあけることが必要なのではありません.

板材に,穴をあける方法自体はいくつもあり,薄板ならレーザでも穴はあきますし,大径の穴であればヘリカル加工で穴をあけることもできます.
中空パイプの製造であれば,中実丸棒の中心に穴をあけたり,板を丸めて溶接したり,マンネスマン法で穴をあけたり,積層造形や鋳造でゼロから作るといった方法も考えられます.
つまり,同じ形状を得るにしても,その方法は複数あって,それぞれに長所と短所があります.
今検討している製造手法が真に適した手法であるか,というのは常に念頭に入れておくべきだと思います.

それぞれの製造手法自体の技術進展もあり,その長所と短所が固定されるわけではないので,展示会や学会での情報収集が重要だと思います.

戻る