切削加工の専門書と論文のリストとオススメ
最終更新日:2021年8月26日
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ボールエンドミルの底刃での加工の問題点
ボールエンドミルで正面フライス加工のような切削を行うと,加工面が悪い部分が発生します.
ボールエンドミルの底刃の中心付近では工具半径が短くなるため,切削速度が極端に低くなるから加工面が荒れる,と説明されますが,これには別な理由が付随します.
- 切削速度と送り速度の大小関係
通常,切削加工においては「切削速度>>>送り速度」という関係が維持されます.
しかしながら,ボールエンドミルの底刃の中心付近では,回転数一定で工具半径が減少することで,切削速度が低くなります.
この切削速度低下によって,「切削速度<送り速度」という関係になる刃先領域が存在します.
この関係になると,通常はすくい面から工作物に食い込むのに対し,逃げ面から工作物に食い込むという現象が発生します.
当然ながら,良好な切削が行われるとは考えにくく,加工面が荒れます.
- アプローチ角が大
底刃近辺ではアプローチ角が非常に大きくなります.
これにより,実切り取り厚さが非常に薄くなります.
切れ刃には丸みがあるために,実切り取り厚さが薄くなると,刃先の丸みで押しならすような加工形態になり,切れ味が非常に悪くなります.
これらの影響を排除するために,5軸加工機を用いてボールエンドミルを加工面に対して傾けて使う方法があります.
この方法であれば,円弧形状の切れ刃が使えるので三次元倣い加工を実施しつつ,切削速度の低下を防ぐことができます.
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