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最終更新日:2021年09月05日

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ドリルの回転中心での切削についての考察

ドリルの回転中心付近はチゼルと呼ばれています.
ここにシンニングという加工が施されており,様々な形状があります.
シンニングによって,食いつきが良くなり,切削抵抗が小さくなるそうです.
シンニングの部分は負のすくい角になっているらしいので,切削加工に近いものが一応なされているのだと思っています.

ただ,昔からずっとよくわからないのですが,ドリルの回転中心では,切削が行われているのでしょうか.
本を読んでいても,シンニングの効果の説明などはあるのですが,ドリルの真の回転中心では何が行われているのかについての記述がないような気がしています.

個人的な考えとしては,真の回転中心では,切削ではなく,塑性変形が行われているのではないかと考えています.
つまり,ドリルの回転中心が工作物に押し付けられて,工作物に塑性流動を強いているのではないでしょうか.
その塑性流動した工作物は,ドリルの外周側に押しのけられて,そこにあるシンニングや,通常のすくい角をもつ切れ刃で切削が行われ,工作物から切りくずとして分離されるのではないでしょうか.
チゼルというのは英語で「chisel」と書き,大工道具の「のみ」という意味らしいので,その点からもそういうことなのだと考えられます.

参考文献によると,チゼル部分にシンニングがない円錐形状でも穴があき,また,スラスト力の大部分はチゼルで発生しているらしいです.
シンニングが無くても穴が開くということは,チゼル部分はほとんど押し込まれているだけという状況を示していると思います.
チゼルでは切削ではなく,塑性変形が起きていると思うので,その部分の工作物はドリルの外周側に押し出されているのではないでしょうか.
また,スラスト力の大部分がチゼルで発生しているということも,チゼルでは,切削という除去加工ではなく,押し込みによる塑性変形が優位になっていることを示しているのではないでしょうか.
実際,下穴をあけた状態で穴あけを行うと,スラスト力がほとんど発生しない,という結果を私自身も見たことがあるので,そういうものなのだと思います.

個人的な考えを適当に書いているだけなので,また何かわかれば追記したいと思っています.

参考文献:
明石剛二:ドリルの形と穴加工,精密工学会誌,Vol.85,No.10,(2019),pp.839-842
石橋大作,明石剛二,篠崎烈:穴加工におけるドリルのチゼルとスラスト力の関係,2020年精密工学会秋季大会学術講演会講演論文集



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