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最終更新日:2024年04月30日

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びびり振動の分類

「びびり振動」と一口に言っても,発生原因が多岐にわたるので,切削中に発生する振動を適当にびびり振動と呼んでいいわけではないと思います.
ここでは,そのびびり振動に対して調べた結果をまとめます.

そもそも「びびり振動」とは何を意味するのでしょうか.
切削加工中に発生する振動は,なんでもかんでもびびり振動なのでしょうか.
機械工学辞典では,「切削加工や研削加工時に異常な振動が発生する現象で,加工面には特有のびびりマークが形成される.」とあります.
機械加工の振動解析の3ページ目では,「有害かつ危険をともなうほど顕著な振動だけをびびりと呼び,のちに述べる片振幅10μm以下程度の微弱な振動はびびりとはいわない場合もある」とあります.
いまいち,びびり振動とはそもそも何か,という定義が決まっていない印象を受けました.
詳細は後述しますが,びびり振動にはいくつかの分類があります.
その分類に当てはまるものはびびり振動と呼ばれると思いますが,そこに当てはまらない振動もあります.
となると,有害な振動全てをびびり振動と一括りにするのも,少し違うのではないかと思います.
しかしながら,一般的には,切削中に生じる有害な振動はすべてびびり振動と呼ばれているように思います.

びびり振動は英語では「chatter vibration」と表記されます.
これは,「おしゃべり」,「ガタガタと音を立てる」といった意味があり,発生時の音に着目した表現であることがわかります.
切削中の音の大きさは加工の激しさと定性的には比例するので,振動が大きい→加工音が大きい→加工に異常がある,というような繋がりで欧米でも理解されていると考えます.

次に,びびり振動の分類についてまとめます.
びびり振動は,強制振動と自励振動の2つに分類されます.

上記のように書かれると表現が曖昧で何を言いたいのかわかりにくいと思います.
また,強制振動と自励振動にも,いくつかの種類があるので,それを示しながら具体例も示したいと思います.
ここで,冒頭にも記載した,上記分類に当てはまらない振動についても述べます.
それは,工作物剛性や工具剛性が単純に低くて,断続切削時に切込み量が変動する場合の振動です.
力外乱型強制振動に該当するような気もしますが,固有振動との共振というより,断続切削の周波数でそのまま生じるため少し違うような気がしています.
加工中の振動が,これが原因で生じている場合もあるのですが,これをびびり振動と呼ぶのかどうかがよくわかっていないです.

上記したように振動には様々なものがあります.
振動の発生原因は,切削現象や工作物剛性,工具剛性,主軸剛性,工作機械内部,工作機械外部のどこかになります.
では,どうやって原因の切り分けを行うのでしょうか.

最初に実行しやすいものとしては,切削条件を変える方法と,空転させる方法があります.
空転させても発生する場合は,原因が工作機械内部か工作機械外部にあるので,切削現象とは直接には関係ないです.
切削速度を変えるとなくなるのは,再生型自励振動や強制振動の可能性があります.
再生型自励振動は,加工中の振動に位相遅れがあるので,加工面に一定の傾きを持つ模様が生じるはずです.
強制振動は,切削によって生じる振動の倍振動が,工作物や主軸の固有振動に一致して発生します.
工作物や主軸,工具の静剛性や動特性を測定できれば,その結果を解析して,振動を回避する方法を検討することができます.


参考文献:

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