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最終更新日:2021年05月06日

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切削加工と金属積層造形

表 切削加工と金属積層造形の比較
(全体が見えていない場合は横スクロールしてください)
種類 切削 金属積層造形
方式 除去加工 付加加工
加工原理 塑性変形,破壊 溶融,接合
素材の材料費
加工に必要な
エネルギー密度
102 J/cm3 103-104 J/cm3
加工速度 調査中 調査中
表面性状
(加工精度)
加工形状自由度 外側からのアプローチのみ 内部構造も制御可能

金属積層造形が世の中に出てきたときに,「切削加工の適用領域が狭くなるのではないか」と思いました.
今は,そこまで入れ替わっている状態ではありませんが,金属積層造形が適用された製品が徐々に発売されてきています.
そこで,切削加工との比較に着目してみたいと思います.

金属積層造形の最大の特徴といえば,粉やワイヤをレーザで溶かして積んでいくことにより,内部に空洞を持ったような構造を作成することができる点です.
しかしながら,加工速度が遅かったり,熱変形が大きかったり,材料費が高かったりといった欠点があります.
金属積層造形で作られたものを私も見たことがありますが,特に表面性状が悪い点が気になりました.
上記の比較はよく言われているものですが,切削加工との比較でいえば,単位体積当たりの加工に必要なエネルギー密度の比較があります.
専門書にもたまに書かれているのですが,切削加工は,研削加工や放電加工,レーザ加工と比べて,必要なエネルギー密度が小さいという特徴があります.
適当に計算してみたところ,レーザによる金属積層造形では放電加工と同レベルくらいのエネルギー密度が必要だと思います.
よって,仮にどちらの加工方法でも同じ形状が作れたとしても,必要な電力量が異なることになります.

個人的には,金属積層造形が熱による溶融を利用している限りは,あるレベル以上の加工精度の確保が難しいので,切削加工の形状精度までは至らないのではないかと思います.
現在,切削加工と金属積層造形を1台の機械で実施することで,金属積層造形でニアネットシェイプを作り,切削加工で仕上げることを可能としたものも販売されており,両者は共存しています.
金属積層造形で技術革新があって,加工精度が格段に上がらない限りは,現状の関係性に落ち着くのではないかと思います.

付加加工によってニアネットシェイプを作ることができ,加工完了時の面粗さが悪いという点では,金属積層造形は鋳造と似ています.
ただし,鋳造と比較した場合は,大量生産に向くかどうかが最大の相違点になると思います.
そういった意味では,少量多品種や試作品製作は金属積層造形で,大量生産は鋳造になるのではないでしょうか.



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