切削加工と金属積層造形
表 切削加工と金属積層造形の比較(全体が見えていない場合は横スクロールしてください)
種類 | 切削 | 金属積層造形 |
---|---|---|
方式 | 除去加工 | 付加加工 |
加工原理 | 塑性変形,破壊 | 溶融,接合 |
素材の材料費 | 安 | 高 |
加工に必要な エネルギー密度 |
102 J/cm3 | 103-104 J/cm3 |
加工速度 | 調査中 | 調査中 |
表面性状 (加工精度) |
良 | 悪 |
加工形状自由度 | 外側からのアプローチのみ | 内部構造も制御可能 |
金属積層造形が世の中に出てきたときに,「切削加工の適用領域が狭くなるのではないか」と思いました.
今は,そこまで入れ替わっている状態ではありませんが,金属積層造形が適用された製品が徐々に発売されてきています.
そこで,切削加工との比較に着目してみたいと思います.
金属積層造形の最大の特徴といえば,粉やワイヤをレーザで溶かして積んでいくことにより,内部に空洞を持ったような構造を作成することができる点です.
しかしながら,加工速度が遅かったり,熱変形が大きかったり,材料費が高かったりといった欠点があります.
金属積層造形で作られたものを私も見たことがありますが,特に表面性状が悪い点が気になりました.
上記の比較はよく言われているものですが,切削加工との比較でいえば,単位体積当たりの加工に必要なエネルギー密度の比較があります.
専門書にもたまに書かれているのですが,切削加工は,研削加工や放電加工,レーザ加工と比べて,必要なエネルギー密度が小さいという特徴があります.
適当に計算してみたところ,レーザによる金属積層造形では放電加工と同レベルくらいのエネルギー密度が必要だと思います.
よって,仮にどちらの加工方法でも同じ形状が作れたとしても,必要な電力量が異なることになります.
個人的には,金属積層造形が熱による溶融を利用している限りは,あるレベル以上の加工精度の確保が難しいので,切削加工の形状精度までは至らないのではないかと思います.
現在,切削加工と金属積層造形を1台の機械で実施することで,金属積層造形でニアネットシェイプを作り,切削加工で仕上げることを可能としたものも販売されており,両者は共存しています.
金属積層造形で技術革新があって,加工精度が格段に上がらない限りは,現状の関係性に落ち着くのではないかと思います.
付加加工によってニアネットシェイプを作ることができ,加工完了時の面粗さが悪いという点では,金属積層造形は鋳造と似ています.
ただし,鋳造と比較した場合は,大量生産に向くかどうかが最大の相違点になると思います.
そういった意味では,少量多品種や試作品製作は金属積層造形で,大量生産は鋳造になるのではないでしょうか.
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