切削油剤関連の書籍のオススメ
切削油剤に関しては,現在販売されている本は「絵とき 切削油剤 基礎のきそ」しかありません.
他には,普通の本ではないですが,一般社団法人 日本工作機械工業会が「切削油剤の選定基準・トラブル対策・銘柄一覧」という技術資料を販売しています.
絶版している本として「切削・研削油剤 その選択と使い方」と「切削油剤ハンドブック」があります.
「切削・研削油剤 その選択と使い方」は1972年発売なので,情報に古い部分があるのかもしれませんが,詳しく書かれています.
「切削油剤ハンドブック」も,それに負けず劣らずの内容です.
「絵とき 工業潤滑剤 基礎のきそ」という本もありますが,こちらは潤滑剤の話なので,切削油剤の話は記載されていません.
とりあえず,切削油剤に関する情報をいくつか以下に示したいと思います.
- 切削油剤の役割
基本的には,潤滑,冷却,洗浄の3つだと思います.
潤滑は,工具と工作物間の摩擦を減らし,切削抵抗を低減します.
冷却は,切削熱を奪うことで,刃先温度を下げ,拡散摩耗を抑えたり,溶着を抑えたりします.
洗浄は,切りくずを押し流して,工作物上やテーブル上をきれいにします.
- 英語での名称
JISでの説明文と英語の対照から推測すると,切削油剤そのものは「cutting fluid」と呼ばれます.
しかしながら,潤滑を主目的として使う切削油剤は「lubricant」,
冷却を主目的として使う切削油剤は「coolant」と呼ばれるのではないかと思っています.
- 切削油剤のかけ方1
切削工具に対してクーラントホースを使って切削油剤を供給するのが外部給油,
切削工具のボディ内部を通して加工点に切削油剤を直接供給するのが内部給油です.
ただし,外部給油は,どの方向からかけるか,というのが性能を左右する面があり,定量的な評価が難しいと思います.
加工点への供給の確実性,切りくず除去を考えると,内部給油のほうがいいんじゃないかと思います.
- 切削油剤のかけ方2
切削油剤は普通にドバドバかける以外にも,特殊な供給方法があります.
圧力を7MPa以上にして供給すると高圧クーラントと呼ばれます.
加工点まで切削油剤が届きやすくなったり,切削油剤で切りくずが分断されたりします.
7MPaが境目である理由ですが,たぶん,1000psiが本来の境目で,それをMPaに変換したためだと思います.
他には,霧状にして供給するミストクーラント.
さらに,ごく微量の切削油剤を多量の圧縮空気で供給するMQL(Minimum Quantity Luburicant)というのがあります.
MQLは切削油剤の使用量が抑えられるのと,切削油剤の回収機構が不要という特徴があります.
- 潤滑による切削抵抗低減を得る他の手法
切削抵抗を下げたいだけであれば,レーザ援用切削というのがあります.
これは,今から切削で除去される部分にレーザを当てて加熱し,材料強度を下げて加工するという方法です.
他には,レビンダ効果を使う方法があります.
工作物表面にインクなどを付けておくと,切りくず生成時に必要な表面エネルギーが小さくなって,切削抵抗が小さくなる,とかいう理由だったと思います.
- 冷却による切削熱低減を得る他の手法
切削熱を下げたいだけであれば,クライオ加工というのがあります.
これは,液体窒素などで冷却しながら切削を行うという方法です.
液体窒素を使った場合,加工点周辺から酸素が無くなるので,酸化しなくなるという別な利点も得られます.
ただし,当然ながら,液体窒素が気化するので酸欠の危険性があります.
- 文献検索での注意点
最近の呼称は「切削油剤」,「切削油」,「クーラント」でなされることが多いと思います.
しかしながら,1960年頃などの古い文献を調査するときは「切削剤」,「切削液」,「工作液」でも調べたほうがいいです.
戻る