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最終更新日:2024年06月24日

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刃先丸みによる,すくい角への影響

切削工具の刃先先端には,ある程度の丸みがあります.
製造上の理由でつけられていたり,刃先強度を上げるためにつけられているようです.
この刃先丸みによって,切れ刃先端部のすくい角は負になります.
この影響はどのくらいなのかについて考えてみます.

まず,下図に刃先近傍の状況を示します.

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図 刃先近傍の概略図

すくい角\( \alpha \)の切れ刃先端に,刃先丸み\( r \)がついているとします.
すくい角\( \alpha \)の線と,刃先丸み\( r \)の円は接線連続になっています.

高さ\( h \)の位置での接線と垂線がなす角度をすくい角を\( \theta \)とします.
このすくい角\( \theta \)は,高さ\( h \)によって変化することがわかります.

この\( \theta \)を使って,高さ\( h \)の位置での平均すくい角\( \theta_{mean} \)を以下のように定義します.

\( \theta_{mean} = \cfrac{1}{h} \int_0^{h} \theta dy \)

他に,もう一つのすくい角の設定方法があります.
それは,高さ\( h \)の位置と,刃先丸みの最下点をつないだ直線と,垂線がなす角です.
これを近似すくい角\( \psi \)とします.

ここで,上記すくい角の試算を行います.
すくい角を15度,刃先丸みを0.03mmとします.
この条件で,高さ\( h \)の位置でのすくい角\( \theta \),平均すくい角\( \theta_{mean} \),近似すくい角\( \psi \)を算出します.

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図 高さとすくい角の関係

すくい角15度と刃先丸み0.030mmの接線連続になる高さは0.038mmです.
高さ\( h \)の位置でのすくい角\( \theta \)は,-90度から始まって,15度で一定になることがわかります.
これは,そうなるように設定しているので,特に面白い点はないです

これに対して,平均すくい角\( \theta_{mean} \)は,高さ0.3mmでも15度に追従していません.
特に0.05mmから0.10mm付近では,高さ\( h \)の位置でのすくい角\( \theta \)との差が30度から15度はあります.
これは近似すくい角\( \psi \)でも同様です.
たかだか0.030mmの刃先丸みで,ここまで数値に差が出てくるというのは俄かには信じがたいですが,そんな感じのようです.
思ったよりも,自分で選んだすくい角というのは,実際には機能していないのかもしれません.

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