情報の重要性と収集
切削加工は,切削工具と加工条件を雑に選んでも削ること自体はできることが多いです.
工具寿命が短いとか加工精度が低いとか,そういう問題が出ることもありますが,ある程度許容されるがために,誰でも切削加工自体が実施できるという現状があります.
工具寿命は実際に削ってみて,加工精度は加工結果を測定するか見た目で判断し,切削抵抗は音で判断する.
これらの手段によって,切削理論を知らなくても,細かくデータをとらなくても,切削工具と加工条件をなんとなく変えて最適化を行うことができます.
こういう手法で最適化を行う場合,往々にして変数の管理と理解を怠っています.
そうすると,何が原因で改善できたのかを見誤らせます.
作業者本人は要因Aが効いたと思っていても,実際は要因Bが効いていた.
でも,要因Aが効いたと思っているので,他の人に「要因Aが効いた」と言ったりします.
すると,その説が一人歩きしたりします.
(話が逸れるのですが,16世紀から17世紀に西欧の一部で行われていたらしい「武器軟膏」の話が,この問題に似ていて興味深いです.)
切削加工は変数が多すぎる上に,複数条件が同時に変わったりしてしまうので,上記事態がよく起こっているように感じています.
そのため,情報を一次情報,二次情報,三次情報に分けた場合,二次情報と三次情報は疑ってかかったほうがいいです.
一次情報であっても,何が変数なのかを可能な限り把握するように務めないと,自分が誤情報を掴んでしまいます.
そのため,様々な情報を収集するのは非常に良いことなのですが,その情報を信じすぎてはいけません.
そもそも同じ加工工程などないので,情報を参考にしても,同じ結果が再現する保証はどこにもありません.
手に入れた全ての情報において,理論的な説明ができるかどうかは常に検討するべきです.
そして,機会があれば,その理論が正しいのかどうかの検証を行うべきです.
それらに先だって必要なのは,理論的な説明を考えるための知識の収集です.
今はインターネットで色々と調べることができますが,インターネットで調べられるのはある程度知っていることだけです.
自分が全く知らない単語は,検索にかけられないので,インターネットで上手く探せないのと同じ理屈です.
最初は,切削加工の本を,図書館で借りたり,本屋で買うのがいいと思います.
本には一般の読者を想定して書かれているものがあるので,最初に手に取るのに向いています.
ただし,一般的な記載内容が多いので,突っ込んだことはほとんどわかりません.
突っ込んだことが書かれているような本は読者層が薄いので,だいたい絶版になっています.
一般的な事項を理解できたら,次は以下の段階に進むことになると思います.
- 出版されている本を買い漁って読む
だいたいどの専門書も一般的な事項では同じことを書いていますが,少しはそこから外れた,珍しいことが書かれていることがあるから.
また,今出版されている本もいずれ絶版になってしまうので,販売されている間に入手しておくのが無難です. - 中古で本を買って読む
絶版になっている古い本は,中古の本として探さないと入手できない. - 論文を読む
一般的な読者を想定していないので,読むのに前提知識が必要とされることがあります.
その場合は,参考文献で引用されている論文を遡っていって読めば,前提知識がわかる場合もあります. - 自分でデータを取る
最終手段としては,自分自身で事実を確認していくしかありません.
自分でデータを取る場合は,変数を自分で制御できるので,自分の知りたいことを直接調べることができます.
この段階までくれば,ほかの人も知らないような事実を把握している状態になっているのではないでしょうか.
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