加工誤差の要因
加工誤差が発生したときに,切削抵抗を下げたり,工具の長さを短くしがちですが,本当にそれが正しい対策なのでしょうか.
本来の対策の立て方としては,加工誤差の要因それぞれの加工誤差への寄与度を調べ,影響が大きいものから対策をとるべきではないでしょうか.
ということで,とりあえず,加工誤差の要因を列挙します.
- 工作機械
- 変位(弾性変形)
- 主軸剛性の異方性
- XYZの位置による剛性の変化
- 熱変位
- 幾何学的誤差(真直度,位置決め誤差など)
- 制御系による運動誤差
- ツールホルダ
- 変位(弾性変形)
- 突き出し量による剛性の変化
- 熱変位
- 工作機械-ホルダの接合部の角度変位
- テーパ部でのゴミの噛みこみ
- 工具の抜け出し
- 把持方式そのものの剛性
- 工具
- 変位(弾性変形)
- 突き出し量による剛性の変化
- 熱変位
- 取り付け誤差(刃振れ)
- 取り付け部でのゴミの噛みこみ
- ホルダ-工具の接合部の角度変位
- 加工条件
- 切削抵抗
- 同時切削刃数
- 連続切削,断続切削
- 切削熱
- 切削油剤(吐出タイミング,油剤の温度変化)
- 工作物
- 変位(弾性変形)
- 加工部位ごとの剛性の変化
- 加工が進むことによる形状変化によって生じる剛性の変化
- 熱変位
- 取り付け誤差
- 環境
- 日当たりによる局所的な熱分布
- 気温,室温と,その変動(1日や四季)
- 切削油剤の温度と,その変動(始動直後の熱伝達と供給系の状態が安定するまで)
- 周辺装置の振動
当然ながら,上記要因が全く同じ加工工程などないので,どの要因が主要因であるかは加工工程によって異なります.
そのため,加工工程ごとに加工誤差改善の最適解は異なるはずです.
ここで言いたいのは,様々な要因があることを理解したうえで,どこから手を付けるかを考えることが重要だということです.
参考文献に示した論文には,加工誤差に占める各要因の割合などの記載があるので,見てみると面白いと思います.
参考文献:
- 高田祥三,小尾誠,佐田登志夫,旋削加工における加工精度の解析,精密機械,40巻,8号,(1974),pp.678-684.
- 竹内 芳美, 坂本 正史,正面フライス加工における加工誤差解析,精密機械,47巻,7号,(1981),pp.874-879.
- 白瀬敬一,稲村豊四郎,安井武司,エンドミル加工における加工誤差の要因分析と定量化,精密工学会誌,Vol.52,No.4,(1986),pp.705-712.
- 白瀬敬一,稲村豊四郎,安井武司,エンドミル加工における加工誤差の推定と要因分析,精密工学会誌,Vol.53,No.9,(1987),pp.1433-1439.
- 白瀬敬一,エンドミル加工の高精度化に関する研究,1989,学位論文,神戸大学 ← 神戸大学学術成果リポジトリKernelで検索すると出てきます
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