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最終更新日:2021年01月06日

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切削加工の最適化の因子

切削加工の最適化を行う際には,切削加工に関わる因子のどの部分を変更することができるのか,ということが重要です.
以下に,切削加工に関係する因子を,変更が難しい側から列挙しています.

(変更が難しい側)

  1. 工作物
  2. 工作機械
  3. 治具
  4. ツールホルダ
  5. 工具経路
  6. 切削工具
  7. 切削条件
(変更が容易な側)

以下に,各因子で何を気にするべきなのかを説明します.

1.工作物
基本的には何らかの性能を発揮するための形状をしているはずなので,設計変更の自由度は低い.
しかしながら,切削での取り代を少なくしたり,同時作用刃数が増えるようなコーナ部を減らしたり,といった工夫は可能.
ただし,これは工作物形状の設計段階で考えていないといけないので,設計者が考えるべき問題です.

2.工作機械
主軸剛性や,運動精度,固有振動数が影響する.
主軸剛性は主軸側とテーブル側の軸構成の影響も受ける.

3.治具
工作物をテーブル上に設置するために治具を介するが,工作物のどの位置を,どの程度の荷重で固定するか.
固定点を増やしすぎると過拘束になるが,少ないと切削抵抗を保持できないという問題が起こる.
ここまでの3つの因子は一度決定してしまうと変更が非常に困難になるので,決定する前に熟慮すべきです.

4.ツールホルダ
工具を把持する形式がコレットなのか油圧なのか焼き嵌めなのか,また突き出し長さがいくらなのか.
基本的には剛性を重視して決定すべき項目.
ただし,テーパ部の形式自体は工作機械によって定まっている.

5.工具経路
工具経路自体は実体がないものであり,CAMを使って生成する必要がある.
そのため,場合によっては,切削工具よりも変更が困難な場合が多い.
ただし,切込み量の配分によって,同時作用刃数の調整ができるので,ここも適当にやると問題が生じやすい.
可能であれば,トロコイド加工やロールイン・ロールアウトなど特殊な工具経路の採用も検討すべきです.

6.切削工具
切れ味や刃数,工具径など,様々な因子を考慮して,どの切削工具を使うかを決定する.

7.切削条件
回転数と送り速度の制御なら,NCプログラムでのSコードとFコードを変えるだけなので,非常に容易.

これだけの因子が合わさって切削加工を形成しているので,全ての因子の積み重ねにより切削加工は最適化される必要があります.
そのためには,実際に加工が始まってしまっている工作機械の前で,問題の解決策を考え始めても,すでに遅い場合があります.
例えば,加工時の振動が大きいからと言って,切削抵抗を小さくするために,切削工具や切削条件を変えることは,加工能率の低下などを招くために,下策だと考えます.
その問題の本来の原因が,主軸剛性や,治具剛性,ツールホルダ剛性が足りていなかったり,そもそも剛性ではなく動特性が悪かったり,工具経路が悪くて実一刃送り量が増加してたりすることである可能性があるからです.
しかしながら,加工を実施するためのセットアップが完成してしまっているがゆえに,上記因子は変更が難しくなっています.
そこで,その穴埋めを,変更しやすい因子である切削工具や切削条件でなんとかしようとしてもどうにもならない場合があります.

ですので,なるべく上流の段階から,切削加工の最適化を意識すべきだと考えます.



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