切削加工の専門書と論文のリストとオススメ
最終更新日:2020年12月05日

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モード解析関連の書籍のオススメ

切削加工において生じる問題として,共振や,びびり振動など振動に関するものがあります.
それらの調査ために行うのが,モード解析です.
これは,解析対象の物体が持つ固有振動数がいくつなのか,そして,各固有振動数における固有振動モードがどのような形なのかを調べるものです.

CAE解析でも似たようなことはできるのですが,部品同士の接合面での剛性や減衰などが厳密には再現できないので,計算結果は実際の数値とは一致しないことが多いです.
そのため,結局は,なんらかの試験を行って測定を行うことになります.
その試験というのは,ざっくり言うと,なんらかの方法で既知の振動を解析対象に与え,その振動に対する解析対象の反応を調べることで,モード解析を行います.
この「既知の振動を与える」というのには,周波数掃引,ホワイトノイズのような不規則波を入れる,衝撃を加える,というように複数の方法があります.

工作機械の主軸や送り軸の指令値を工夫することで,そういった試験を行うことも可能なのですが,一番簡単なのは衝撃を用いる打撃試験です.
加速度センサが内蔵された打撃ハンマで解析対象に衝撃を加え,解析対象に取り付けた加速度センサで解析対象の反応を測定します.
この打撃試験について詳しく書かれているのが,「モード解析入門」です.
非常に詳しく書かれているので,これさえ読めば問題ないと思います.

打撃試験の内容を理解するには,振動工学,周波数応答,フーリエ変換,サンプリング定理,加速度センサあたりの知識が必要になります.
特によくわからないのはフーリエ変換だと思います.
何らかのプログラムを使えば,計算自体は簡単に実施できるのですが,数学的な手順や意味を理解しようとするとなかなかわかりにくいです.
いくつか本を買いましたが,わかりやすかったのは「フーリエの冒険」です.
多少,癖がある本ですが,さっぱりわからない状態だった自分には役に立ちました.

ただし,フーリエ変換そのものを勉強しても,実際にそれを運用する際に注意すべき点があります.
エリアシングやナイキスト周波数は知っておかないといけないのですが,それ以外に窓関数を理解しておく必要があります.
純粋なフーリエ変換の説明だけをしている本には,窓関数の記載がないものがあります

フーリエ変換や窓関数についても「モード解析入門」には記載があります.
よって,この1冊の内容が,この1冊で理解できるのなら,他の本はなくてもいいかもしれません.



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