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最終更新日:2023年01月29日

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フライス工具における切れ刃密度

砥石には「砥石の単位作業面あたりに存在する切れ刃の数」を意味する切れ刃密度という概念があります.
そこで,エンドミルやフライスカッタにおいて,「工具径当たりの刃数」を切れ刃密度として定義してみます.
これを使うと多少は面白いことがわかるので,それについて,このページで説明します.

まず,加工能率を示す式に,切れ刃密度を組み込んでみます.
この式はミリングマニアックのWEBサイトでも記載しています.

\( M_{RR} = a_{p} \cdot a_{e} \cdot V_{f} \)
\( = \cfrac{ a_{p} \cdot a_{e} \cdot f_{z} \cdot V_{c} }{ \pi } \cfrac{Z}{D} \)

\( M_{RR} \): 材料除去能率(加工能率)
\( a_{p} \): 軸方向切込み深さ
\( a_{e} \): 半径方向切込み深さ
\( V_{f} \): 送り速度
\( f_{z} \): 1刃当たりの送り量
\( V_{c} \): 切削速度
\( Z \): 刃数
\( D \): 工具径

上式より,切込み量などを変更しなくとも,切れ刃密度を変えるだけで,加工能率が高くなることがわかります.

次に,切れ刃間ピッチ(隣接する切れ刃同士の円周上のピッチ)を示す式に,切れ刃密度を組み込んでみます.

\( L_{c} = \cfrac{\pi D }{Z} \)
\( = \pi ( \cfrac{ Z }{D} )^{-1} \)

\( L_{c} \): 切れ刃間ピッチ

上式より,切れ刃密度の逆数に,切れ刃間ピッチが比例することがわかります.

ということで,工具径を変更したとしても,切れ刃密度を一定にしておけば,加工能率や切れ刃間ピッチに影響が出ないことがわかります.
とはいっても,実際に販売されている工具での切れ刃密度がどうなっているかわからないと,ここから先の話が進みません.
そこで,国内メーカのカタログ3冊を参照して,工具径Φ8からΦ315までの刃先交換式フライスカッタのデータ抽出を行いました.
具体的には,工具径と刃数の組み合わせ1064組を抽出しました.
下図に,その抽出結果を示します.

tooldia_teeth

抽出結果を用いて一次線形近似式も作成しておきます.
最大と最小は,各工具径での最大刃数と最小刃数のみを使って作成した近似式です.
平均は,全データを用いて作成した近似式です.

最大:\( Z = 0.133 \cdot D + 2.046 \)
平均:\( Z = 0.066 \cdot D + 1.204 \)
最小:\( Z = 0.040 \cdot D + 0.431 \)

下図に,これらのデータを用いて切れ刃密度を計算した結果を示します.

tooldia_teethdensity

既に示した2つの図を比較すると,Φ50以下において,工具径と刃数が減っても,切れ刃密度が上がる場合があることがわかります.

下図に,これらのデータを用いて切れ刃間ピッチを計算した結果を示します.

tooldia_distance




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