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最終更新日:2025年01月09日

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切りくずのテンパカラーと酸化膜厚さ(チタン)

切りくずの色から加工時の切削温度の予想をするという手法があります.
切りくずの色は,切りくず表面の酸化膜の厚さによる干渉色(テンパカラー)で決まります.
酸化膜の厚さは,加工条件によって変化する切削温度や冷却速度によって決まります.
そのため,切りくずの色からの切削温度推定は非常に難しい問題です.
そこで,とりあえずの参考として,酸化膜の厚さとテンパカラーの関係を求めることにします.

チタンの場合は陽極酸化によって酸化膜厚を作り,干渉色を発色させる場合が多いようです.
この類の文献では,陽極酸化処理時の電圧と時間で色を制御しているため,酸化膜と色の相関関係のデータが見当たりませんでした.

1件だけ見つけることができた文献中図3の実写画像から各サンプルのテンパカラーのRGB値を抜き出しました.
次に,同文献の表1より,各サンプルの酸化膜厚の数値を取得します.
これにより,酸化膜厚と干渉色の関係が得られます.
下図にその関係を示します.
RGBの値は0から255の値をとりますが,次図では0から1に正規化した数値を表示しています.

RGB_steel
図 チタンにおける酸化膜厚さによるテンパカラーのRGB値

上図の元データは酸化膜厚に対して離散的なデータになっています.
そこで,このRGB値の間において上図の実線で示したような線形補正を行い,連続的に変化する色見本を作成します.
ただし,RGB値が連続的な関数に従っているようには見えないので,この操作の妥当性は怪しいですが,ここでは連続的な色見本を作ってみます.

tempercolor_steel
図 チタンにおける酸化膜厚さによるテンパカラー

鋼とチタンの酸化膜の比較で言うと,鋼の酸化膜はマイクロメートルオーダであるのに対し,チタンの酸化膜はナノメートルオーダである点には注意が必要です.

参考文献:長田典子,飛谷謙介,亀井光仁,赤木俊夫,高橋一浩,山村咲弥,チタン陽極酸化干渉色のシミュレーション技術,日本製鉄技報,第418号,2021,pp.68-76.

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