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最終更新日:2022年08月22日

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凝着と切削油剤の冷却性能における熱伝達率の共通点

切削工具のすくい面上における凝着の発生しやすさを評価する指標と,切削油剤を吐出したときの衝突点での熱伝達率の評価指標には共通点があります.
ここでは,その共通点が何なのかについて説明します.

まず,切削工具のすくい面上における凝着の発生しやすさを評価する指標を説明します.
これは切削加工技術者のための知識と理論に記載されており,次式で示されます.

\(\displaystyle adhesion \propto \cfrac{1}{ \sqrt{K \rho C}} \varepsilon_{B} \)

\( K \): 被削材の熱伝導率
\( \rho \): 被削材の密度
\( C \): 被削材の比熱
\( \varepsilon_{B} \): 被削材の破断ひずみ

同様の式は,難削指数による難削性の評価での切削温度を示すKronenbergとShawによる式(6)としても出てきています.
\(\displaystyle \sqrt{K \rho C} \)の部分が小さくなると,切削温度が高くなり,凝着が生じやすくなります.

次に,切削油剤を吐出したときの衝突点での熱伝達率の評価指標を説明します.
これは,切削液の伝熱性能について 第2報 不水溶性切削油を平板に衝突する噴流としたときの熱伝達率の式(6)に記載されており,次式で示されます.

\(\displaystyle \alpha_{0} \propto \sqrt{K \rho C Q} \)

\( \alpha_{0} \): 衝突点における切削油剤の熱伝達率
\( K \): 切削油剤の熱伝導率
\( \rho \): 切削油剤の密度
\( C \): 切削油剤の比熱
\( Q \): 切削油剤の流量

こちらの数式にも\(\displaystyle \sqrt{K \rho C} \)で示される,同じ部分が含まれています.
\(\displaystyle \sqrt{K \rho C} \)が高いと冷却性能が高いことになります.

結局は,熱伝達率が切削温度の高低を定めていることになり,それが凝着の生じやすさや,切削油剤の冷却性能に影響する,ということだけです.
よって,その数式に同じような部分が出てくるのは当たり前といえば当たり前だと思います.
温度測定は中々難しいので,こういった数式を使って,各現象の影響の定量化を図ってはどうでしょうか.

参考文献:



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