切削加工の専門書と論文のリストとオススメ
最終更新日:2026年09月28日
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特殊な切削方法(フライス加工)
フライス加工には,少し特殊な工具経路を描くものがあります.
それらの工具経路の名称は,英語そのままのカタカナ表記なので,ぱっと思い出しにくいです.
そういう工具経路を以下にまとめます.
以下の説明においては,フライス工具(カッタ,エンドミル)の回転軸はZ軸と並行であるとし,工具底面が-Z側にあるものとして説明します.
- ランピング加工(Ramping milling,傾斜加工)
XY平面上で一直線に送りをかけつつ,Zにも同時に送りをかける.
「Ramp」という英単語は「傾斜する」という意味なのでそのままです.
基本的には-Z方向に送りをかけるため,副切れ刃がないと実施できない.
どのくらいの角度まで傾斜をつけられるかは,切削工具メーカのカタログに記載がある.
ランピング加工に使えない切削工具には,そもそもその角度の表記はない.
- プログレッシブランピング加工(Progressive ramping milling,双方向傾斜加工)
XY平面上で一直線に送りをかけつつ,Zにも同時に送りをかけ,傾斜加工を実施する.
その後,XY平面上で同じ軌道を戻りつつ,Zに再度送りをかけ,傾斜加工を実施する.
つまり,Z方向にジグザグに傾斜加工を繰り返す加工法.
「プログレッシブランピング」という単語自体がSandvikさんのWEBサイト以外で出てこないのでメジャーかどうかは不明です.
- トロコイド加工(Trochoidal milling)
XY平面上で円軌道を描きながら,さらに,XY平面内で一方向に送りをかける.
「Trochoid」という英単語は,数学の分野から来ている名詞なので,日本語訳としても「トロコイド」です.
工具直径と同じ幅の溝を一気に加工する溝加工よりも,切削抵抗を低減させることができるはず.
- ヘリカル加工(Helical milling)
XY平面上で円軌道を描きながら,-Z方向にも送りをかける.
「Helical」という英単語は「らせん形の」という意味なのでそのままです.
ランピング加工と似ているようで似ていない.
ランピング加工時の傾斜角度と送り量の限界値が違うようなので,ランピング加工の数値を使って,そのままヘリカル加工の限界送りを計算してはいけない.
サーキュラランピング加工と呼ばれる場合もある?
- チルトヘリカル加工(Tilted helical milling)
XY平面上ですりこぎ運動を描きながら,-Z方向にも送りをかける.
ヘリカル加工に対して,工具の傾斜を追加したような加工方法.
- プランジ加工(Plunging milling,突き加工)
XY平面上には移動せず,-Z方向に送りをかける.
「Plunge」という英単語は,「突っ込む,押し込む」という意味なのでそのままです.
フライス加工用の工具は,ドリルとは異なるので,プランジ加工では本当の意味での穴はあけられない.
工作物端部に,フライス工具の副切れ刃を少しオーバーラップさせて,-Z方向に送りをかけて除去加工を行う.
どのくらいオーバーラップさせられるかは,副切れ刃の半径方向寸法による.
フライス加工は一般的に半径方向の剛性が低く,軸方向の剛性が高い.
プランジ加工だと,軸方向の剛性を使うことになるので,切削中の工具側の弾性変形量を抑えられるらしい.
- Wobble milling
「Wobble」という英単語は「ぐらつく,よろめく」といった意味を持ちます.
「-もっと知りたい物つくり-工作機械の知られざる物語」のp.29によると,この加工方法の原典は「Schulze V, Becke C. (2009). Taumelfrasen zur schadigungsarmen Bohrbearbeitung von Kompositwerkstoffen. ZwF; 104-6: 473-477.」とのことですが私は読めていないです.
ドイツ語では「Taumelfräsen」と呼ぶらしく,「taulmel」も「ぐらつく,よろめく」という意味を持ちます.
チルトヘリカルと同じようなすりこぎ運動をしますが,Z軸方向には送らず,穴両端部でのバリ発生を抑制しつつ,穴径を拡大させるのに活用する加工法だと思います.
「Csongor Pereszlai and Norbert Geier, Comparative analysis of wobble milling, helical milling and conventional drilling of CFRPs, The International Journal of Advanced Manufacturing Technology (2020) 106:3913–3930」の図1と図2に概念図があります.
- ヒーリング(Heeling)
正面フライス時に,先刃だけでなく,後刃でも切削条痕が生じ,アヤメ状の切削条痕が加工面に残ることがある.
これを回避するために,工具を送り方向に対して傾斜させ,後刃が加工面に接触しないようにする手法がヒーリングである.
「Heel」という英単語は「かかと,ハイヒール」という意味なので,ハイヒールのようにかかとが上がっている状態と同じです.
昔の3軸フライス盤では,主軸の傾きそのものを変更したりしていたらしい.
5軸加工機であれば,比較的簡単に設定することができる.
ただし,傾斜を大きくしすぎると,加工面が平面にならず,工具径に比べて大Rを持つ楕円形の溝が加工される.
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