被削材としての金属，樹脂，岩石，木材，砂

切削加工に従事している場合，金属の加工を主としていることが多いと思います．
しかしながら，切削加工としてとらえた場合，他にも色々な種類の被削材があります．
被削材によって切削加工がどの程度異なるのかを調べてまとめてみたいと思います．

金属
工業製品の製造を目的として被削材として使われることが最も多い．
切りくず形態として，流れ型，き裂型，むしれ型，せん断型がある．
延性の強い被削材や，ぜい性の強い被削材などによって，切りくず形態が大きく左右される．
比切削抵抗は500MPaから4000MPaくらいの範囲になる．
樹脂
日常生活で使用するプラスチックに加え，エンジニアリングプラスチックなどがある．
樹脂でも切りくずは流れ型からき裂型など色々な形態を示す．
比切削抵抗は100MPaから500MPaくらいの範囲になる．
比切削抵抗が小さいことから，刃先の鋭さが必要とされることが多い．
岩石
岩石には延性がないために，ぜい性が支配的な切りくず形態であるき裂型が発生する．
岩石の表層に複数のくさびを打ち込んで，岩石を真っ二つに割る様子を見たことがある人には，そのぜい性が理解できると思います．
秋吉大理石，青石，河津凝灰岩を被削材とした場合，比切削抵抗は10MPaから400MPaくらいの範囲になる．
あまり関係ないかもしれませんが，切削工具メーカ最大手のサンドビックさんは，鉱山機械も作ってるらしいです．
参考文献：
鈴木光，西松祐一，岩石およびセメントモルタルの切削抵抗について（第1報），日本鉱業会誌，Vol.84，No.961，（1968），pp.1569-1573
西松祐一，秋山政雄，大久保誠介，吉田竹志，岩石の切削抵抗におよぼす刃物すくい角の影響，Vo.100，No.1161，（1984），pp.1063-1067
中島巌，木下重教，岩石の切削抵抗に関する理論的考察-岩石の切削における破壊の機構-，Vol.95，No.1092，（1979），pp.49-55
木材
木材では，流れ型，折れ型，縮み型，むしれ型といった切りくず形態がある．
木目によって異方性があり，比切削抵抗が2倍から3倍くらい変化する．
比切削抵抗は10MPaから120MPaくらいの範囲になる．
比切削抵抗が小さいことから，刃先の鋭さが必要とされることが多い．
参考文献：
林大九郎，木材切削加工における問題点，精密機械，Vol.30，No.10，（1964），pp.763-769
番匠谷薫，奥村正悟，服部順昭，村瀬安英，木材科学講座6　切削加工，海青社
砂
そもそも砂が連続体ではないので，切削と言えない気もする．
ただ，ブルドーザーで砂を押し進める様子は二次元切削のようにも見える．
切りくず形態として，流れ型，せん断型，れつ断型がある．
乾燥したケイ砂，やわらかいロームを被削材とした場合，比切削抵抗は0.01MPaから0.1MPaくらいの範囲になる．
参考文献：
畑村洋太郎，千々岩健児，土の切削機構の解明（第1報，土の切削パターンについて），日本機械学会論文集，40巻，338号，（1974年），pp.2945-2955．
畑村洋太郎，千々岩健児，土の切削機構の解明（第3報，切削によって刃物にかかる応力の分布および切削抵抗について），日本機械学会論文集，42巻，355号，（1976年），pp.970-980．

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