旋盤性能に関する土井静雄先生の実用検査法
切削加工において,切削工具や工作機械にどの程度の剛性が必要なのか,というのはあまり明示されておらず,よくわかりません.
星鐵太郎先生の「機械加工の振動解析」のp.143には「通常の中・小型工作機械で切削加工を行なうものでは,工具と工作物の間に静的荷重をかけて測定された静コンプライアンスが1μm/kgf(または0.1μm/N)を超える場合には,加工時に振動の問題が多発する」という文言があります.
それ以外に,剛性について定量的に述べている文献は見たことがなかったです.
今回,「標準工学シリーズ
切削の理論と実際」のpp.125-126に土井静雄先生の提唱されたとされる旋盤性能の実用検査法が記載されているのを見つけました.
ここでは,旋盤のチャックと刃物台の剛性について述べられているのですが,数式しかなく,実際の数値がよくわかりませんでした.
そこで,数式に従って計算してみて,どの程度の剛性が必要とされているのかを確認してみます.
ただし,「標準工学シリーズ
切削の理論と実際」には,その実用検査法がもともと何の文献に載っているのかの記載がなく,また,土井先生の論文も調べてみたのですが相当する内容を見つけられませんでした.
そのため,実用検査法の詳細については孫引きになってしまいます点,ご了承ください.
実用検査法の一部として下記の荷重試験の内容が記載されています.
---以下,p125より引用----------------------------------------------------------------------
(a)主軸のたわみおよびチャックの取付のこわさ
図8.28のように,チャックで振りSの1/4に相当する直径の丸棒を締め付け,チャックのつめに近いところにP/6kgの水平荷重を加えたときの水平たわみが,0.08mm以内であること.
ただし,\( P= \cfrac{S^{2}K_{s}}{32000} \),\( S \)=振り(mm)
\( K_{s} \)=180kg·mm2(軟鋼の比切削抵抗)
---p.125より引用ここまで----------------------------------------------------------------------
---以下,p126より引用----------------------------------------------------------------------
(d)往復台および刃物台のこわさ
往復台すべり面,および刃物台すべり面がかたすぎないように調整したのち,図8.31に示すように刃先に相当する点に,水平荷重P/12を水平横および縦方向に加え,そのときの刃物台の変位をダイヤルゲージで測定する.水平縦0.03mm以内,水平横0.03mm以内とする.
---p.126より引用ここまで----------------------------------------------------------------------
これらの荷重試験では,下記2種の剛性を満たすか否かを判断していることになります.
- 主軸のたわみおよびチャックの取付の剛性\( K_{chuck} \)
\( K_{chuck}= (P/6)/0.08 = \cfrac{S^{2}K_{s}}{15360} \)
- 往復台および刃物台の剛性\( K_{turret} \)
\( K_{turret}= (P/12)/0.03 = \cfrac{S^{2}K_{s}}{11520} \)
では,次に,これらの剛性を実際に計算してみて,どういった値を示すのかを確認します.
\( K_{s} \)には軟鋼の比切削抵抗を常に用いるのか,加工対象の被削材に合わせて変更するのかもわかりませんが,軟鋼の比切削抵抗でひとまず計算します.

星先生の静剛性10N/μmを赤点線で上図中に描いてあります.
星先生の静剛性10N/μmと等しくなる振りSは,主軸のたわみおよびチャックの取付の剛性\( K_{chuck} \)だとΦ255,往復台および刃物台の剛性\( K_{turret} \)だとΦ295です.
星先生は「通常の中・小型工作機械で切削加工を行なうもの」と書かれているので,大体12inch以下とすると振りはΦ300以下なので,星先生の示している基準値のほうが土井先生の基準値よりも高いのではないかと考えられます.
特にこれ以上何も計算に使えないので,こんな感じでした,としか言いようがない結果ですが,まぁこんな感じの計算結果になる,ということです.