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最終更新日:2023年08月16日

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ツールホルダの剛性比較

主軸の大きさで剛性が違う,という話はよく聞きます.
ツールホルダの長さや太さで剛性が変わることもよくわかります.
それでは,インターフェースが違っていて,それ以外が同じ場合,ツールホルダの剛性に違いはあるのでしょうか.
ここでは,それを検証します.

検証には「多段段付き片持ち梁の剛性」に示した数式を用います.

ツールホルダの形状を2段段付き片持ち梁に近似して,自由端側先端部でのコンプライアンスを計算します.
サイトの題目には剛性と書きましたが,剛性の逆数であるコンプライアンスで比較します.
BT30,BT40,BT50のインターフェース違いでの比較を行います.
これら3つのインターフェースでは,ツールホルダのフランジ部の直径が異なります.
具体的な形状がないと比較できないので,ツールホルダメーカのカタログを参考に下表のように決定しました.

表 インターフェースごとのフランジ部の寸法(固定端側)

規格 直径 mm 長さ mm
BT30 40 15.9
BT40 63 15.9
BT50 100 15.9

表 ツールホルダの工具把持側の寸法(自由端側)
把持可能な工具直径 mm 自由端側外径 mm ツールホルダ全長
6 20 45 - 135
13 35 60 - 165
20 46 90 - 200

上表に示したインターフェースと自由端側寸法の組み合わせで計算を実施します.
ツールホルダ全長に,フランジ長さが含まれるものとしています.
ツールホルダ中心には切削油の内部給油用の穴が開いているものとし,その直径は把持可能な工具直径に等しいとしています.
下記計算結果には,主軸の剛性や工具剛性が含まれていないので,実加工のコンプライアンスとは異なる点に注意してください.

toolholder_compliance_dia6
図 把持可能な工具直径6mmでのコンプライアンス比較


toolholder_compliance_dia13
図 把持可能な工具直径13mmでのコンプライアンス比較


toolholder_compliance_dia20
図 把持可能な工具直径20mmでのコンプライアンス比較

インターフェースによる差異はほとんどないと考えられます.
把持可能な工具直径20mmだと,インターフェースによる差異があるように見えます.
しかしながら,コンプライアンスの絶対値そのものが小さいので,実際にはほとんど差はないと考えられます.

ついでに,以下に,各インターフェースごとで把持可能な工具直径を変えたときの比較を示します.

toolholder_compliance_bt30
図 BT30でのコンプライアンス比較


toolholder_compliance_bt40
図 BT40でのコンプライアンス比較


toolholder_compliance_bt50
図 BT50でのコンプライアンス比較

インターフェースによる差異がほとんどないことは既にわかっているので,グラフ間では差はほぼないです.
把持可能な工具直径が6mmから13mmになると,コンプライアンスが約10分の1になっていることがわかります.
これは自由端側外径が20mmから35mmになることで,断面二次モーメントが(35/20)^4で9.38倍となることが主要因と考えられます.

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