エンドミルの相当直径
エンドミルは断面形状が複雑なので断面二次モーメントが簡単には計算できません.
刃数やねじれ角との関係については「刃数による断面二次モーメントの異方性への影響」や「ねじれ角による工具剛性の異方性への影響」に記載しました.
しかしながら,エンドミルで得られる剛性をある程度でも知りたいだけであれば,細かい話は必要ないです.
そういうときには「相当直径(equivalent diameter)」という考え方があります.
これは「エンドミルの断面形状による断面二次モーメントと等価な断面二次モーメントが得られる円柱の直径」を指します.
つまり,これが使えばエンドミルの断面二次モーメントが計算できるので,工具剛性も計算できます.
参考になるデータが「ねじれ刃エンドミルの断面形状と曲げ剛性」の図4,図5および図7に記載されています.
これらの図から数値を読み取って,工具径の何%が相当直径になるかを刃数ごとに計算すると下表が得られます.
表 刃数と相当直径の関係
刃数 | 相当直径/工具径 | |
---|---|---|
2枚 | 最大値 | 85.5% |
最小値 | 70.2% | |
3枚 | 77.0% | |
4枚 | 80.9% |
実際の工具の断面形状は上表を得るときに使われた工具の断面形状とは異なると思います.
実際の工具での相当直径を得るには,以下の2つの方法が考えられます.
- エンドミルを切断して断面形状を得たうえで,断面形状から断面二次モーメントを計算する
- エンドミルを曲げて,荷重と変位の関係を取得し,剛性から断面二次モーメントを計算する
とりあえず,上表から相当直径を計算して,断面二次モーメントを計算してみるのが簡単でいいと考えます.
参考までに,相当直径で計算したときの断面二次モーメントが,工具径をそのまま直径とした円柱の断面二次モーメントに対して,どのくらいになるかを計算します.
断面二次モーメントは\( I = \cfrac{\pi D^4}{64} \)で得られるので,直径の4乗で効きます.
表 刃数と断面二次モーメントの関係
刃数 | 相当直径/工具径 | |
---|---|---|
2枚 | 最大値 | 53.4% |
最小値 | 24.2% | |
3枚 | 35.1% | |
4枚 | 42.8% |
上表より,工具径そのままの円柱として工具剛性を評価すると,最低でも約2倍は大きく見積もってしまうことがわかります.