切削理論のまとめ
「切削理論のまとめ」と書くとだいぶ恐れ多いことを書いているような感じですが,ここには大したことは書いてないです.
切削理論というと,「切削抵抗と摩擦角,せん断抵抗,せん断角」に描いたような切削力ベクトルの図が出てきて,せん断面やせん断角の話が出てきます.
せん断面は,切削加工における刃先近傍において,工作物が塑性変形とせん断変形によって切りくずに変化する仮想的な平面を指し,実際には「面」というよりは「領域」になります.
せん断角は,せん断面が送り方向となす角を指します.
極論を書くと,せん断角が90度だと切りくずは塑性変形しないので,切込み深さと同じ厚みになり,「鉄のリンゴと理想的加工法」に書いたような理想的加工法になるはずです.
しかしながら,そんなことはないので,切削加工で得られた切りくずは,厚みと長さが加工前とは異なっており,加工後の形状に切りくずを巻き付けても加工前の形状には戻りません.
切削理論を進めていくと大体,最後にせん断角に行き着いて,このせん断角がわからないという結論になります.
「すくい角,切削比,せん断角」に書いたように,切りくずの厚みを測定することによってせん断角を調べることができますが,実際には測定するのは難しいです.
そこで,このせん断角を定める数式が色々考えられていて,「人名が付いている法則や数式」に示したようなMerchantの式などがそれにあたります.
ただし,どの数式も実測値と一致するようで一致しないもので,せん断角を完璧に推測するような数式は出てきていないはずです.
そのため,机上の計算だけで切削抵抗を予測することは現代でもできないわけです.
そうなると理論計算ではなく,シミュレーションであれば,それができるのか,という疑問があるかもしれませんが,それも無理だと考えます.
「切削シミュレーションに思うこと」に書いたように,摩擦や高ひずみ速度域における塑性変形などの,切削加工を構成する要素のそれぞれが解決していないからです.
それぞれが解決していないのに,切削加工が正確にシミュレーションできるわけがないと思います.
理論もシミュレーションも切削抵抗をうまく予測できないので,実用上使われているのが比切削抵抗(比切削抵抗のまとめ)です.
では,切削理論を学ぶ必要がないかというと,そんなことは決してないと考えます.
刃先近傍でどういう現象が生じていて,それがどのような関係にあり,どこまで定式化できるか,というのは切削現象そのものを理解するのには役立つはずです.