切削温度と切削熱のまとめ
切削温度や切削熱の測定は難しいです.
切削温度の測定手段は「切削温度の測定方法一覧」のように色々ありますが,実際に測定するのは難しいです.
どこの切削温度を知りたいか,によっても難易度が変わります.
例えば,「刃先のある1点の温度」というのは,やろうと思えば測れるのですが,1点の温度がわかったところで,どうにもならないです.
かといって,「刃先のある1点の温度」を多数の点で取って,温度分布が作れるか,というと,切削面積自体がそこまで広くないので,その中に多数の測定点を設けることが難しいです.
そうなるとシミュレーションになるわけですが,「切削シミュレーションに思うこと」にも書いたように,シミュレーションの結果をそのまま信じるのはよくないと思います.
では,その中間でわかりそうなことといえば,「加工点で生じている切削熱の大きさ」ではないかと考えます.
加工点での切削熱が大きいと,加工点の温度も高くなりやすいと考えることができるので,使いどころはあると考えます.
ざっくり言えば,「切削熱の推定」に書いたように,加工点での仕事量に,加工点での発熱量は比例するはずです.
その刃先が移動熱源になると解釈すると「Jaegerの移動熱源」が使えます.
熱伝導率や比熱といった被削材の材料特性も「凝着と切削油剤の冷却性能における熱伝達率の共通点」に示したように\(\displaystyle \sqrt{K \rho C} \)として影響します.
「難削指数とレーダチャートを用いた被削性予測(計算機能あり)」では,\(\displaystyle \sqrt{K \rho C} \)と硬度が切削温度に影響するという解釈になっています.
硬度が影響するのは,硬度が高いと大体は比切削抵抗が高いので,加工点での仕事量が高くなり,それが加工点での発熱量につながるためです.
手軽な加工点温度の推定としては,切りくずの色があります.
切りくずの色はテンパカラーと呼ばれ,これは切りくず表面の酸化膜の厚みが人間には色として見えているものです.
このテンパカラーが切削点での温度を間接的に示していて,それが被削材に適した切削温度であれば切削加工は良好である,という考え方です.
炭素鋼のテンパカラーは「切りくずのテンパカラーと酸化膜厚さ(炭素鋼)」,チタンのテンパカラーは「切りくずのテンパカラーと酸化膜厚さ(チタン)」にて書きました.
ただし,酸化膜の厚みというのは,入熱と冷却の関係によって定まるはずで,切削温度だけでは決まらないはずです.
冷却については「切りくず冷却時の温度変化」や「熱き裂と工具径」に書きました.
冷却速度は切りくずの形状や堆積した状態の影響を受ける可能性もあるので,それらを考慮するのは難しいと思います.
そもそも切削温度は,被削材ごとに適正な温度があるはずであり,「Taylorの寿命方程式と切削距離」や「切削速度と工具寿命の関係式」を考慮すると,切削速度の影響が大きいのだと思います.
Taylorの寿命方程式では,切削速度が上がると工具寿命が短くなる,という構成になっているためです.
しかしながら,切削条件だけでなく加工点の周囲環境の影響も受けるため,「切削速度と加工形態」に示したように,異なる加工法の切削速度をそのまま持ってきても,適正な切削温度にはできないと考えます.