剛性のまとめ
剛性というのは,「荷重に対する変形の生じにくさ」というイメージですが,単位としては「荷重/変位」なので,「変位に対する荷重の発生しやすさ」とも言えます.
「剛性と強度」にも書いたとおり,剛性は荷重と固定端との間の全形状と全材質の影響を受けます.
全形状と全材質の影響を直列ばねとして受けるため,一部でも剛性が低い箇所があると,全体の剛性も著しく低下します.
「剛性とコンプライアンスの使い分け」にも書きましたが,上記関係性を理解しようとすると,コンプライアンス(剛性の逆数)で論じたほうがわかりやすいです.
とはいっても,コンプライアンスはあまり有名ではないので,人への説明としては使いにくいです.
切削加工においても,工具剛性と工作物剛性は非常に重要です.
それは「変位と荷重による荷重制御」にて書いたように切削加工が基本的にはオープンループ制御であるためです.
切込み深さが設定値どおりにならず,加工誤差となる理由は,「切削抵抗と,工具と工作物の剛性」に書いたように,工具と工作物が切削抵抗に応じて弾性変形して反力を生むためです.
切削加工をうまく実施しようとするならば,切削工具と治具を準備するときに剛性を可能な限り高くすることが重要です.
工作物剛性は,工作物形状が決まっていると変更できないので,それを支える治具によって補うことになります.
そのほうが,加工誤差の要因となる弾性変形も小さくなるし,固有振動数も高くなります.
剛性を変えたときの周波数応答の変化は「質量と剛性,減衰による周波数応答への影響」に示してあります.
「円柱の寸法が変位や剛性,強度に与える影響」や「L/Dと剛性の関係」,「ツールホルダの剛性比較」,「ツールホルダ剛性と工具剛性の比較」に示したように,切削工具単体だけでなく,ツールホルダとの組み合わせを考えることも重要です.
可能な限り,太く短い構造を選択すべきで,細く長くしないことです.
細く長いと加工形状の自由度は上がりますが,切削加工を成立させることが難しくなります.
加工形状の自由度が最低限確保できるなかで,太く短い構造を採用するのが良いです.
エンドミルやドリルのような,溝をもつ複雑形状だと剛性を検討するのは難しいですが,考える方法はあります.
「刃数による断面二次モーメントの異方性への影響」より,刃数が3枚以上であれば剛性に異方性はないです.
「ねじれ角による工具剛性の異方性への影響」より,例え1枚や2枚であっても,ねじれ角によるねじれが十分にあれば剛性の異方性は消えます.
「エンドミルの相当直径」より,苦肉の策として相当直径を使う手もあります.
単純形状であれば剛性や固有振動数を計算できる機能も以下に用意してあります.
これらを使って,先端に工具が取り付けられたツールホルダや,旋削工具のシャンクにおいて,どの程度の剛性が見込まれるかを事前に検討し,剛性が十分に確保できるように努めてください.
「丸棒片持ち梁の剛性と固有振動数(計算機能あり)」
「段付き丸棒片持ち梁の固有振動数計算(計算機能あり)」
「任意断面を持つ段付き片持ち梁の固有振動数計算(計算機能あり)」
「四角柱片持ち梁の剛性と固有振動数(計算機能あり)」
「多段段付き片持ち梁の剛性」